インボイス制度の激変緩和措置が報道されました。
日本経済新聞記事はこちら。
西日本新聞はこちら。
概要としては、
- 課税売上年1億円以下(案の段階)事業者は、少額取引1万円未満(案の段階)なら、インボイスなしで控除OK?
- ただし、免税事業者から課税事業者への転換は必要・・・?
というもので、まだ公式見解は出ていない状態ですが、ざっくり解釈したいと思います。
インボイス制度の概要
インボイス制度では、免税事業者(ざっくりと課税売上1,000万円未満の事業者)と課税事業者がおり、免税事業者側や、免税事業者と取引する課税事業者にとって従来運用の大きな変更を伴う制度です。
特に課税事業者側にとっては「インボイスを出さない事業者との取引」において、消費税計算が従来よりも不利になり、何も対策せずに免税事業者と取引を行うと、同じ額の取引であっても、消費税の納付が多くなったり、損益計算書でも損失が増えたりします。
このあたりは別記事で、課税事業者は免税事業者との取引でいくら損をするのか、またその対策について記述していますので、よろしければご参照ください。記事の最後にもリンクを貼っておきます。
新聞記事の解釈について
インボイス制度により、これまで免税によって恩恵を受けてきた小規模事業者の収入面でのマイナスが大きく報道されていますが、全事業者の経理関係者にとって、
事務処理がとにかくメンドクサイ
というのがネックではないでしょうか。
全部の取引において、免税取引なのか課税取引なのかを細かくチェックし、免税取引に対しては、80%だけ控除処理OKというようなとんでもない煩雑さが待ち受けています。
その中で、課税売上1億円以下の事業者が、1万円未満の取引でインボイス不要ともしなれば、
- 事業経費にする買い物などの会計で生じる1万円未満のものでは、免税か課税かを気にしなくて良い(これまでどおりの処理でOK)
- 振込手数料の「負担させられ問題」(10,000円の請求書に対し、振込手数料500円を控除して9,500円だけ振り込まれたりする=振込手数料を当方負担にされる)でも、書類不要?!
こういったことで事務処理が緩和されることは予想されます。
小規模でない事業者は緩和措置なし?!
現時点での新聞報道では「小規模事業者に限って」、という表現がなされています。
小規模じゃない所は何もなし?!
課税売上1億円超の事業者にとっての緩和措置についてはなんら報道がなく、このままでは想定される煩雑な手続きのままインボイス制度がスタートすることとなります。
ただし、小規模事業者への激変緩和措置は、「課税事業者に登録したら適用」とあるので、免税事業者から課税事業者になってもらえらば、今回緩和措置の対象外となるかもしれない課税事業者側も、事務処理面での煩雑さは減ると思います。
しかし今回の報道で免税事業者は、課税事業者になるインセンティブになる・・・のでしょうか?
課税事業者になれば、消費税を納める必要があって取引先が値上げに応じなければ収入は減るので、少々事務処理が軽減されるとはいっても、今回の措置はあまり意味がないようにも思います。
課税売上1億円超の課税事業者にとってはもちろん、緩和措置が無ければ今回の報道はあまり意味のないものとなり、免税事業者から「課税事業者になるので値上げを・・・」と言われて値上げをすると損をするので、やはり、免税事業者との今後の取引継続には引き続き慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。
以上、今回のニュースに対する現場の一人としての解釈でした。
12月半ばごろには与党の税制改正大綱が決定されるため、ひとまずそれを待つこととし、追加の報道にも注視していきたいと思います。
※今記事は現時点での報道を「個人が解釈したもの」であり、公式決定事項でないため、真に受けないようご注意ください。
【こちらの記事もどうぞ】
・インボイス制度・免税事業者と取引する企業の具体的な値引等の対策
・現職の経理マンによる経理へ転職して後悔していること3選を紹介!
・経理の現場より、現状のひどいインボイス制度をこう変えて欲しい!
コメント