与信管理とは何か
皆さんの会社では取引先の「与信管理」を行っていますか?
もしそのような仕組みが無いのであれば、新しい会社と取引を始める時や、既存の継続的な取引先については定期的に「信用調査」を行うことをおすすめします。
そしてその上で「この取引先は安全なのでいくらでも取引OK」「この取引先は危険度が高いので、前入金必須」などと、取引先の状況に応じて「どのくらいの信用を与えるのか」を決め、管理していくのが与信管理です。
「信用調査ってどうやるの?」「危険な取引先をどう見極めるの?」
・・・ということを「財務諸表」の観点からわかりやすく解説していきます。
信用調査を専門で行う会社として、帝国データバンクや東京商工リサーチのような会社がありますが、信用調査のプロではなくても、ある程度、やり方次第で危ない会社を見極めることが出来るのです。
その為には、
・損益計算書(そんえきけいさんしょ)と貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)
を、ある程度見られることが必要になってきます。
この二つは、会社の決算の時に作成される「財務諸表」と言われるものです。
損益計算書と貸借対照表の概要
損益計算書は、1年間のその会社の儲かり具合が分かる成績表であり、会社員なら源泉徴収表のようなものでしょうか。
一般的な損益計算書は下図のようなものです。
一年間の総収入(売上)から、諸々の控除を差し引いて、会社の最終的な利益である「当期純利益」が分かるものです。
諸々の項目、そして様々な「利益」がありますが、これは違うページで詳細に説明したいと思います。
関連記事はこちら⇒与信管理とは何かわかりやすく解説!危険な取引先を見極める2「損益計算書」
そして一方、貸借対照表は、要は会社の資産や負債状況を示すものです。
それまでの成果の積み重ねと、その成果がどんな資産に変わっているか、を見ることができます。
一般的な貸借対照表は下図のようなものです。
例えば、貸借対照表の右側は「どのようにお金を調達したか」が分かります。
負債というのは借金で、いずれは返済すべきものです。
そして、純資産(自己資本)というのは、株主から調達したお金やこれまでの利益の積み重ね額などで、要は誰かに返済する必要がありません。
左側は、その調達したお金がどのような資産に変わったか、が分かります。
預貯金を貯めたり、車を買ったり家を買ったり、ですね。
損益計算書と貸借対照表はどちらが重要?
もちろん、両者とも重要な情報ではあります。
ただ一般的な感覚だと、なんとなく、初めは損益計算書を重視しがちですが、損益計算書は、1年単位。
年に1回、決算の時に会社の成績を集計します。
それに対し貸借対照表は、集計は1年単位で行いますが、「それまでの会社の歴史が詰まったもの」ですので、こちらを見た方が、より会社の安全性が分かるものです。
例えば、Aさんが、「やった!今回の年収(損益計算書)1,000万だ!」と言いながら、預貯金はほぼゼロで休日はほぼパチンコで過ごし借金が300万あったとする。
一方でBさんが「へぇ、すごいね。俺は600万だったよ」と言いながら、家は一軒屋(現金一括購入)、こつこつ貯めた預貯金や株式投資で資産が3,000万あって、借金らしい借金もないとしたらどうか。
もちろん、Aさんの年収が今後もずっと1,000万を維持し、賭け事も辞め、より本業の年収を上げるための努力や投資の猛勉強を初めてお金を増やすことに本気でシフトすれば良いでしょうが、現時点ではそうではない。
Bさんは、Aさんより年収は低くても、豊富な預貯金を持てているほどに支出を削るなどして、いわば「利益」を出せており、売ればそれなりの価値が見込める資産も持っている。
というところで、「現時点においては、Bさんの方が安定性が高い」、と判断できます。
財務諸表を読み込むことは、非常に奥が深いです。
上記にもリンクを貼りましたが、次のテーマとして、まずは損益計算書の詳細を記載していますので、よろしければご覧ください。
関連記事はこちら⇒与信管理とは何かわかりやすく解説!危険な取引先を見極める2「損益計算書」
貸借対照表についても別記事としていますのでこちらもよろしければご覧ください。
関連記事はこちら⇒危険な取引先を見極める4~貸借対照表~
もし、もうある程度財務諸表は読めるし、「建設業の会社が顧客にいるよ」、という方は下記の関連記事に「経審(経営事項審査)を利用した信用調査方法」を記載しておりますのでご覧ください。
関連記事はこちら⇒会社独自の与信調査
訪問調査、取引先との面談も与信管理では重要
財務諸表上での見極めも重要ですが、訪問調査や取引先との面談においても「これは危ないな」というポイントがあります。
いくつか挙げてみますと、
・社長が数字に弱く、豪快さはあるが、ささいな部分にはこだわらない。⇒会社体力、実態に見合わない経営がなされる恐れがある。
・いつも経理担当者が不在。⇒支払に関する対応に追われている。居留守を使う。
・経理担当者が最近辞めた。頻繁に担当が変わる。⇒会社のお財布事情を一番近くで見ているので、一番に逃げ出せる。
・事務所内の雰囲気が暗い。⇒社員のモチベーションが低い。
・蛍光灯が切れている。⇒社員のモチベーションが低い。
などあります。
帝国データバンクから出版されているこうした関連の書籍も出ていますので、詳細はこちらをご覧いただければと思います。